
ただのペットボトルを「ばあさんの水筒」と呼ぶおじいちゃん。
他人にとってはどうでもいい物でも、おじいちゃんにとっては、死んだおばあちゃんとの思い出がつまった大切な品物だ。
おばあちゃんがかわいがった老犬シロもまた、かけがえのない存在。
ペットボトルは踏まれてしまったけど、おじいちゃんはそれに怒ることもなく、シロと散歩に出かける。
逝ってしまったおばあさんが残した、たったひとつのもの。
それを慈しむおじいさんと犬の静かな時間…。
収録作品:「むかしむかし」/マタ今度ネ/こあくまとよる/骨董屋さくら堂/しろいくも/ヒミズの丘/夢の国/ぶどう摘み/おウチに帰ろう/はなのはなし/花の咲く道/たまごの水/ホッピーズベア/「在るところへ」


コメント
不思議な絵本のような作品で始まる岩岡先生の短篇集。
全作品岩岡先生のポワッとした画から急にするどい演出が飛び込んできて物語に惹き込まれっぱなしでした。
とくに表題作の「しろいくも」は犬のシロのモノローグやコマの間に挟まるお婆さんの感情、おじいさんの表情などおもわず涙が零れてしまう演出の連続でした。
全体を通してとてもキレイな作品たちです。
文章と絵が心に沁みる。
特に”おウチに帰ろう”と”たまごの水”がGood!
いくつかものっそい好きな話がありました…
ちょっぴり泣いた
時に残酷な悲しさを、
それでも最後に残してくれるやわらかな感情。
14篇から成る短編集ですが、
この1冊でひとつの世界を作り上げている気がします。
大切なものの為に目指していたもの、
いつかその理由を忘れ、目的が摩り替わったとき。
「ヒミズの丘」が大好きです。
表紙の雰囲気からは、ほっこりしたものかな、なんて思っていたら、予想をはるかに上回る、不思議な感じの短篇が14話。
可愛かったり、不気味だったり、じんわりしたり、どれひとつとして似たものがないのはすごいと思う。
読んだ時の気分によって、ぐっとくる話は変わるかも。
また時間を置いて、読んでみたいと思う。