
ほんとうはすべて知っていた。
心の底流(undercurrent)が導く結末を。
夫が失踪し、家業の銭湯も手につかず、途方に暮れる女。
やがて銭湯を再開した女を、目立たず語らずひっそりと支える男。
穏やかな日々の底で悲劇と喜劇が交差し、出会って離れる人間の、充実感と喪失感が深く流れる。
映画一本よりなお深い、至福の漫画体験を約束します。
「今、最も読まれるべき漫画はこれだ!
すでに四季賞受賞作で確信していたその物語性と演出力に驚く。
豊田徹也は心の底流に潜む、なにかの正体を求めるように静かに語る。
」――(谷口ジロー)


コメント
アンダーカレント アフタヌーンKCDX
初期の吉田秋生の絵によく似ていると思った。
微妙な表情の描き方がものすごく上手く、美しいのだけれど、それでも、なんとなく全体としてシンと冷えた印象を与えるのは、主人公の目に生気がないからだろうと思う。
元気に笑っていても、心を映したその目には気が宿っていない。
この「アンダーカレント」というタイトルは絶妙なネーミングだ。
表面上は何事もなく平穏と暮らしているように思える人々の中にも、その一つ下の層で何が流れているのかは、誰にもわからない。
それは目に見えないものであるだけに、当人がひたすらに隠し通せたとすれば、そこにどれほど大きな暗渠が巣食っていたとしても、他の誰にも気付かれないままやり過ごすことは出来る。
主人公の内部に空洞があるにもかかわらず、この物語が救われるのは、その周りにいるサブキャラクターの明るさのせいだ。
その影響を受けて、主人公の表情も段々と変化を見せていく。
とても良い後味を残す作品だった。
彼がどういう人間だったか正直いってよくわからなくなってきてるんです。
彼はいろんなこと私に話してくれましたよ。
でも本当に大事なことは話してくれなかったのかもしれない・・。
今思い出すと、時々、彼は私に何か重要なことを伝えたがってたように思うんです。
ちょっとした表情とか間とか・・沈黙とかそういったものを私も感じてたと思います。
(p.202)
アンダーカレント アフタヌーンKCDX
人間ドラマ。
本当にそのまま人間ドラマ。
自分と他者を理解することとは?常にその問題を投げかけてくる。
淡々と進むしキャラクターの感情も希薄だけど、繊細な描写や構図でぐいぐい引きこまれて、些細な描写の中からも色んな意味を汲み取ろうと自然に見入ってしまう魅力があった。
アンダーカレント アフタヌーンKCDX
豊田徹也氏の作品は・・・今年(2019)の5月23日に読んだ…「珈琲時間(2009)」以来に読むなー。
暗い話ではなく、ほっこりと笑える部分があって。
面白く読めた。
おふろ屋がテーマな漫画も良いなーって。
アンダーカレント アフタヌーンKCDX
風鈴のすずやかな音色は涼をもたらし、
かまの中の薪はパチパチと火の粉をとばしながら、はぜている。
タイルを磨くブラシの音は心地よいリズムをうみ、
ページをめくるごとにそれらの音は耳に心地よく響く。
そう、だからこそ
音が失われてしまった瞬間、
訪れる静けさはひと際目を引く。
失われた音を、その原因を探ろうと、わたしは目を凝らす。
信じられない程の哀しみが、痛みが、裏切りが、
彼女から彼女の生活から音を奪ってしまったことに愕然とする。
あまりの完成度の高さに驚き
作品の余韻に身を委ねたまま、
わたしは静かに本を閉じる。
アンダーカレント アフタヌーンKCDX
映画化されそうでされない不思議。
私は最後まであの旦那が好きになれなかった...。