夕凪の街 桜の国

昭和30年、ヒロシマを舞台に一人の女性の小さな魂が大きく揺れる。
最もか弱き市井の人たちにとって戦争とは何だったのか、原爆とは何だったのか。
こうの史代が描く渾身の問題作。

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コメント

  1. user より:
    夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)

    広角で描かれた淡い景色が味わい深い。
    原爆ドームのカットを見るだけでも本書を読む価値がある。
    ラストにかけて絵は消え失せ、主人公の科白(せりふ)だけが続く。
    そこに強い憎悪は見られない。
    庶民の感覚からすれば「どうして?」という疑問は浮かんでも、この惨劇を遂行した人間の姿が浮かび上がってこないためだろう。
    人間の所業とは思い難い残酷を繰り返すのが人類の業(ごう)なのか。

    http://sessendo.blogspot.jp/2014/04/blog-post_3.html

  2. user より:
    夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)

    昭和三十年。
    原爆投下後の広島で暮らす一人の女性の人生と、彼女に関わる人々の運命。

    彼女が日々を生きる上で感じる幸福と、その隙間から垣間みる記憶と、その向こうの死。

    戦争を…特に原爆をテーマにするあたり、こうのさんの類い稀な感性と作品への愛を感じます。

    にしてもこうのさんの描く女性ってどうしてこうも魅力的なんでしょう。
    可愛い。
    本当に可愛い。
    否が応でも身近に感じてしまうんですよね。
    そして男性陣も素敵ときている…。

    戦後70年。
    あの頃と変わったもの。
    変わらないもの。
    そういう一つ一つを大切にしていきたくなる素敵な物語です。

  3. user より:
    夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)

    「その〈週間ポスト〉に北野武の(東日本大震災についての)インタビューが載っていた。

    “「二万人が死んだ一つの事件」じゃなくて、「一人が死んだ事件が二万件あった」”」
    (桜庭一樹『本のおかわりもう一冊』より)

    この漫画は、まさにその、死んでしまった“一人”の視点からヒロシマを描いている。

    原爆投下は戦争という、国と国、体制と体制、思想と思想の対立の末の大きな犠牲であるけれども、それはすなわち、遠い異国の名も知らぬ人間に、訳の分からぬ理由である日突然だれかが殺されたという「事件」がたくさん在ったということである。

    たくさんの人が死んでしまったという表現では生温い。
    “一人”の人が死んだ事件が、事実が、その日、たくさん在った。
    その“一人”はたまたま隣にいた人だったかもしれないし、もしかしたら私だったかもしれないという恐ろしい事実が。

    嬉しい?
    十年経ったけど
    原爆を落とした人はわたしを見て
    「やった!
    またひとり殺せた」
    とちゃんと思うてくれとる?
    (p.33)

    2013.05.13

  4. user より:
    夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)

    原爆が落ちてから10年後の広島。

    誰かに「死んでもいい人間」と思われたという事実に、
    自分が生きている意味を見失っている主人公、皆実。

    やっと乗り越えて人を好きになれた矢先、
    内臓の混じった黒い血を吐きながら死んでいく。

    戦場の恐ろしさとはまた別の、
    戦争の悲しさをつたえる物語。

    映画「ほたるの墓」とともに、
    小中学校での必読本にして欲しいです。

    「敢えて戦争の過去を見ないようにしていた」
    という作者の言葉が、自分にもつきささりました。

  5. user より:
    夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)

    『この世界の片隅に』の作者の作品なので読んでみました。
    原爆投下後の広島に生きた平野家の人たちを中心とした物語(ヒストリー)。
    『夕凪の街』は原爆から10年後の昭和30年の広島が舞台。
    職場の同僚との語らいや淡い恋…しあわせを感じる瞬間にも原爆での記憶が蘇り、過去に引き戻されて苦しむ皆実。
    原爆による痛みは彼女の心のみならず、やがて身体にも及んで…。

    『桜の国(一)』は昭和62年の東京が舞台で皆実の弟旭の娘、七波が主人公。
    野球が大好きなおてんば娘で健康そのものだが、弟凪生は喘息持ちで入院しており、祖母(皆実の母)も体調がすぐれずその病院で検査を受けていた。

    『桜の国(二)』は平成16年。
    大人になった七波が父旭の後をつけて広島を訪れる。

    七波の手から舞い上がる紙吹雪が桜の花びらに重なって、父旭と母京花の若き日へとオーバーラップしていくシーンが美しい。
    桜の花びら一枚一枚が、散っていった人々の命を連想させるような気がする。

    運命の大きな渦に抗えない人間の儚さ、悲しみを感じつつも、そんな中でも受け継がれていく人々の思いや命の輝きをも感じられる、余韻の残る物語でした。

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