
ただのペットボトルを「ばあさんの水筒」と呼ぶおじいちゃん。
他人にとってはどうでもいい物でも、おじいちゃんにとっては、死んだおばあちゃんとの思い出がつまった大切な品物だ。
おばあちゃんがかわいがった老犬シロもまた、かけがえのない存在。
ペットボトルは踏まれてしまったけど、おじいちゃんはそれに怒ることもなく、シロと散歩に出かける。
逝ってしまったおばあさんが残した、たったひとつのもの。
それを慈しむおじいさんと犬の静かな時間…。
収録作品:「むかしむかし」/マタ今度ネ/こあくまとよる/骨董屋さくら堂/しろいくも/ヒミズの丘/夢の国/ぶどう摘み/おウチに帰ろう/はなのはなし/花の咲く道/たまごの水/ホッピーズベア/「在るところへ」


コメント
不思議な絵本のような作品で始まる岩岡先生の短篇集。
全作品岩岡先生のポワッとした画から急にするどい演出が飛び込んできて物語に惹き込まれっぱなしでした。
とくに表題作の「しろいくも」は犬のシロのモノローグやコマの間に挟まるお婆さんの感情、おじいさんの表情などおもわず涙が零れてしまう演出の連続でした。
全体を通してとてもキレイな作品たちです。
表題作の他、数編入っていますが、どれも心に響くお話ばかりです。
ただ、この人の本領は色使いのような気がしたので、今後に期待。
読むたびに泣いてしまうほど、感情豊かになる短編がたくさんあります。
作者の個性があまりにも強すぎて、自分の読み方が出来るかどうか踏ん切りがつきませんでした。
しかし買って良かった。
この人の作品も優しい気分になれますが、キャラクタータッチの絵柄とは裏腹にどうしようもない悲しい現実も突きつけられます。
それとともに優しさをもらう感じです。
表題作「しろいくも」と「骨董屋さくら堂」「おウチに帰ろう」「たまごの水」に惹かれます。
「しろいくも」「たまごの水」はおじいさん、おばあさんの思い出を大切にしている人にはたまらなく切なく、ツボな話ではないかと思います。
短編集ですが、コミックスを通しての作品の包み方、その始まりと終わりが一個の世界を作り上げている作品です。
マンガですが、芸術です。